HOME » 自腹で潜入レポート » この相談所の潜入レポート » ブライダルネットVIPのお見合いレポ①「お腹のムシは、お見合い前に抑えておこー」
暖かい土曜日の12時に待ち合わせ。場所は日本トップクラスのホテル。これまでにも、このホテルに何度か行ったことはあるが、お見合いで行くのは生まれて初めて。しかも待ち合わせ場所は、ホテル上階である。
12時という時間帯は私の方から指定した。ブライダルネットのお見合いする日程は、申し込まれた方が優先で決めることができる。
週末の12時はわりと早い時間帯だから、待ち合わせ場所まで遠い私としては移動するのも容易じゃない。それでも待ち合わせ時間の10分前には到着することができた。身支度を整えるため、女性用トイレで準備を開始。12時になる2~3分前には、帝国ホテルのクローク前ロビーでソファに座って待つための余裕さえ生まれた。
ふらっと辺りを見回してみるが、相手はまだ来ていないらしい。窓際のいすに座り、くつろぎながら高層の風景を楽しむ。ジャスト12時になった。しかし相手の姿は見えないから、少し不安になる。そしてもう一度待ち合わせ場所が記してある案内メールを確認することにした。
| 日時:3月●日(土曜日) 12時 場所:●×■ホテル ○○階 ○○ラウンジ「▲▲▲▲▲」 (お席にてお待ち合わせ。○○様・○○様のお名前でご予約 させていただきました。 ご予約いただきました旨を ラウンジスタッフにお申しつけください。) 当日何かございましたら下記携帯までご連絡ください。 携帯番号:■■■-■■■■-■■■■ お見合いの結果については、翌日の13時ころまでに、メールでお返事をお聞かせくださいませ。 |
私がたどり着いた場所は間違いなかったのだが、多少のズレがあることに気づいた。ロビーのある場所ではなく、すでに予約が取られているお店の中ということだ。同じフロアにはお店が何店舗かある。そのうちの一つが、ブライダルネットから指定されていた場所。
そのことにようやく気づいて、急いで店の入り口に立つスタッフに訪ねると、
遅刻は厳禁のお見合いなのに、初っ端から3分ほど送れてしまった。これに対しては少々焦ったが、席まで案内してもらう間は、正直に話すしかないと思っていた。
テーブル席に席っている男性の後ろ姿が店の窓際の方に見える。室内を見渡すと一人で椅子に座っている男性は何人もいたが、ウエイターの案内する方向を考えると、その人なのだろうと軽く予想はついた。
大きくて体つきもばっちり。メガネをかけていると、別人のように見た目が変わる。めがねを外しているプロフィール写真の顔がぜんぜん違う。顔の見分け方には自信があるほうだけれど、そんな私でも見分けがつかないと思われるほどのギャップがある。
そして極めつけはシルバーのアクセだ。サラリーマンのようなスーツを着ていながら、鎖状のブレスレッドを身に着けている。
お互いに自己紹介を済ませ遅れた事情を軽く説明すると、Aさんはそんなに気にしていない雰囲気だった。
Aさん:「お腹は空いていますか?」
お昼の12時と言ったら、そういう時間帯だ。この日は絶好のお掃除日より。平日同様の時間に起きて休日にしかできない掃除や洗濯をしながら、軽くご飯も食べる。そして、お見合いのためにたっぷりと2時間以上をかけて準備したのだから。
私は、「そうですね。朝食が早かったので、結構空いていますよ。Aさんは?」
聞かれたら、お相手の状況も確認しておきたいところだからだ。しかしAさんは朝が遅かったのか、それほど空腹感を感じていないよう。
フフ~ンと思いながら、再びメニューに目を落とす。昼間だし、香りの良いお茶がいいかなと思い始める。そして、どのくらいのお値段なんだろうと数字の並びを見たところで仰天した。
お茶一杯が1,500円以上。
幾らなんでも高すぎやしないかと思えてくる。
そんなビックリしているところで、「軽く食べられるケーキにしましょうか」と言ってきたのはAさんのほうから。なるべくならお茶代だけで済ませたいところだけれど、お腹が空いているって言っている女性に飲み物だけを注文し、ケチと思われたくないという気持ちもあるのだろう。
お見合いといっても、初対面から食事代まで出すほどではないのだろう。
私はご飯を食べたかったけれど、値段を見てしまってはご飯まで手は出ない。しかもお相手は食べたくないようだし、自分だけ食べようとするのはさすがの私も気が引ける。
お相手の言うように、ランチ時だけどケーキとお茶で済ませることにした。
ウエイターを呼ぶと、2人分のケーキとお茶を注文。戻ったウエイターが手に持っていたものは、ケーキのサンプルだった。8種類ほどある中から、食べたい種類を選ぶことに。
Aさんはショートケーキ、私はレアチーズケーキを頼むこととなった。
ようやく注文を終え落ち着きを取り戻したところで、改めて会話を始める。まずはAさんから仕事や休みについての話を始める。話そうとするAさんは、とても緊張しているよう。耳のあたりを真っ赤にさせて、言葉も上手く出てこない。仕事に対する質問をされるから、こちらが答えると、それに対する反応がないのだ。どう言葉を返したらよいか戸惑っているようにすら見える。
プロフィール上のAさんは、もともとスポーツが大好きだから、とても活発そうに映って見えた。だから、私のほうこそAさんのパワーに押しつぶされやしないか、ガッツについていけるかなど、変な焦りをおぼえていたのである。ところが、この口下手ぶり。目の前にしたときは、あまりのギャップに驚くしかなかったのである。
こうしてあまり弾まない会話をしているところへ、お茶とケーキが運ばれてきた。ちょうど話題がやってきて良かったとホッとするしかない。しかし、あまりにもお高いこのケーキ、フォークとナイフで食べなければいけないらしい。自分の右側には、それらがセッティングされている。
ドキッとしたのは私だけではなかったようで、Aさんも「すごいですねぇ。ケーキをフォークとナイフで食べるんですかぁ」と、ひとしきりに感心の様子。ここで私たち2人は、フォークとナイフでのケーキの食べ方は慣れないものだという共通の価値観を持っていることに気づいた。そしてAさんは、フォークで気楽に食べましょうと促してくれるのだった。
さっそくフォークを持ち出し、サクッと一口分をフォークで切り分けようしたときだった。私のケーキにだけフォークが刺さらない。むむ? ケーキは本来柔らかくてフンワリしている。そして、目の前の私のレアチーズケーキもクリームのようにフンワリして見える。
なのに、フォークは刺さらない。
おかしいと思っていたのだが、先ほどウエイターがケーキのサンプルを見せてくれたとき、一緒にケーキの紹介もしてくれた。私はレアチーズケーキを選んだけれど、ただのレアチーズケーキじゃないことを思い出した。それは、メレンゲ焼きに包まれたレアチーズだったのである。
メレンゲ焼きがどんなもので食べ心地も知っていたくせに、なぜかこの面倒な食べ物を選んでしまった私。
それに気づいてからは、フォークを左手に持ち替え、ナイフでサクサクと切り分けていくことに必死。しかし、そう簡単に切らせようとしないメレンゲちゃん。軽く切ろうとすればまったく切れている感じがない。かといって、力を加えようとすれば勢い余ってガシャンとお皿を鳴らしてしまう危険がある。
こうしてフォーク&ナイフと奮闘している間にも、すでにAさんはひと口目を食べ終わっていた。私も追いつかなくては!と余計に焦りが出てくる。
軽くナイフを上下に動かしていても、らちが明かないと判断した私。少々強めにナイフを動かすことにした。始めのほうこそ何の反応もないかのようだったが、一度割れる感じが見えると、その勢いでバリバリっとメレンゲは砕けた。と同時に、ナイフは柔らかなレアチーズをあっという間に通り抜け、お皿の上でガシャンと音を立てたのだった。
マナー上では、食器の擦れる音を出すのはNG。分かってはいたけれど、メレンゲの硬さに対抗する力をお皿にぶつかる前で抑えるのは困難だった。
最初の擦る音から、メレンゲを食べやすい大きさに砕くためのヘマを2~3度侵しながらも、会話を弾ませる。
お互いに映画が好きということで、映画の話でAさんは激しいタイプの作品が好きという意外な一面を発見。シャイボーイなのだけれど、ハートは熱いものを持っているのか。
続いて、北京オリンピックにちなんだアスリートの話などに突入。若いときには、スポーツに明け暮れていたAさん。一線を退いた今でも、スポーツ好きなのに変わりはないらしい。日本で注目されているオリンピックの各種目について話し出したかと思えば、次から次に話が止まらない。しまいには、独自に勉強したというトレーニング法や○△×□学とかいうものまで丁寧に教えてくれるのだった。
それまでの話に対する反応の薄さが嘘のように、得意げな様子が見てとれる。まず笑顔からして違うのだけれど、一番はそれまで緊張気味でまともな反応さえなかったのがきちんと会話になっているということだった。
その途中で、話の流れを変えてみようと試みた私は、ここに来るまでの間にエスカレーターで見かけた花嫁の話を持ち出してみた。この日は、春という結婚式が多いシーズンの土曜日。私が待ち合わせ場所に向かう途中で乗ったエレベーターには、これから式に向かう格好をした花嫁が乗り合わせてきたのだ。白無垢を着た花嫁は介添人や身内の人に囲まれて、とても優美なさまだった。
私としては、いかにも楽しそうに話したのだが、それに対する会話は目にも明らかなほどに弾まない。結局、結婚トークは私が話を振っただけで終了してしまった。
こうして、お茶を飲みながらスポーツについて延々と話す私とAさん。私もスポーツが嫌いではないから、お互いに楽しんで話ができたと思う。
こうして1時間半がすぎると、そろそろお開きの時間という態度になってきた。
Aさんのこの日の予定は何もなさそうだったが、これ以上話してもあまり意味がないようにも思えてくる。
帰ろうかという雰囲気がどちらからともなく出てくると、お互いに帰りの準備をし始めお会計のある入り口付近へ荷物を持って移動した。
「お2人さまのお代金を合わせまして、5,○×□円です。」
金額の高さに圧倒見てみると、耳を疑いたくなった。
というのも、この日2人で食べた内容は、お茶2種類とケーキだけだ。
私も財布を出そうとしたが、レジ会計の前で渡すのは良くないと思い、Aさんがカードで払い終わった後に渡そうとした。すると予想どおり「いいですよ」と言われ、Aさんのごちそうになるのだった。
結果的に、Aさんとのひと時は楽しく過ぎていった。スポーツの話をしているときは、という限定付きだが。
しかし他の話題になると途端に会話が冷めだすのだから、何のために会ったのかよくわからない。本来の目的を見失ってしまったかのようにすら感じたのだ。
これでは、お見合いという名ばかりのスポーツ談義になってしまう。
スポーツの話をするとキラキラしだすAさんが格好よく見えた反面、それ以外の話題でちっとも盛り上がらなかった状態を考えると、2回目に会うのはちとツライ。
交際をスタートさせたとしても、心から喜べる自分がいるとは到底思えない。